INTRODUCTION イントロダクション

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なにもない空間が生み出す生きることの哲学

「舞台はどうすれば真実のものになるだろう?悲劇か喜劇にしてしまうのはとても簡単なこと。でも、何より大切なのはそのぎりぎりのところを綱渡りすることなんだ」

ピーター・ブルックは世界でもっとも尊敬を集める、現代演劇に革命を起こした演出家のひとりである。そのブルックが、本物の舞台を生み出すために、そして役者も観客も観たことのないような新しい舞台を作るために、長年にわたり実験と実践を重ねて作り上げてきたのが、卓越したパフォーマンスを可能にする取り組みである“タイトロープ”だ。

そして今回、40年ぶりに幕をあげて、“タイトロープ”が舞台上でどのような魔法を役者に施すのか披露してくれることになった。

舞台を生み出すということの意味を探求する役者たちと音楽家たちの姿を、濃密な2週間にわたって息子のサイモン・ブルックが追う。

5台の隠しカメラを使った密着取材という、ドキュメンタリーとしては型破りな『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』は、ありのままの瞬間をカメラが邪魔することなく、ピーター・ブルックとその一座の仕事ぶりに肉迫し、創造のプロセスにひそむ魔法を驚くほどはっきりと描き出す。

『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』はブルックの哲学と人生の鍵となるものであり、観た者をも変えてしまう。ブルックその人に迫るこのユニークな映画は、濃密なワークショップから、哲学的な経験への綱渡りに観る者をいざなう。